初の挫折。
未だ余韻の残るモウリーニョ解任。
自身が続投を望む中での解任は初めてと言っていい出来事です。
なぜこうなったか?は、これから色々な所で考察されていくでしょう。
なので、ここでは次のステップに行くには何が必要なのか?を考えてみようというのがお題になります。
■おさらい
監督経歴
第一次政権2004-2007
第二次政権2013-2015
●獲得タイトル
プレミアリーグ3回(2004-05、2005-06、2014-15)
FAカップ1回(2006-2007)
リーグカップ3回(2004-05、2006-07、2014-15)
FAコミュニティ・シールド1回(2005)
●インテル
獲得タイトル
セリエA2回(2008-09、2009-10)
スーペルコッパ・イタリアーナ1回(2008)
コッパ・イタリア1回(2009-10)
UEFAチャンピオンズリーグ1回(2009-10)
リーガ・エスパニョーラ1回(2011-12)
コパ・デル・レイ1回(2010-11)
スーペルコパ・デ・エスパーニャ1回(2012)
滔々たる経歴です。
試合数辺りのタイトル獲得数で上にいるのはグアルディオラのみであり、モウリーニョ曰く「もう他の監督から学ぶ段階は過ぎている」。
●データ(Qoly様より引用)
ジョゼ・モウリーニョ:727試合21タイトル(34.6試合につき1タイトル)
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ペップ・グアルディオラ:378試合19タイトル(19.89試合につき1タイトル)
ボブ・ペイズリー:535試合20タイトル(26.75試合につき1タイトル)
ウォルター・スミス:766試合21タイトル(36.47試合につき1タイトル)
ジョック・ステイン:1005試合27タイトル(37.2試合につき1タイトル)
オットマー・ヒッツフェルト:1039試合26タイトル(39.96試合につき1タイトル)
ルイス・ファン・ハール:831試合19タイトル(43.73試合につき1タイトル)
ビセンテ・デル・ボスケ:472試合10タイトル(47.2試合につき1タイトル)
ファビオ・カペッロ:625試合13タイトル(48.07試合につき1タイトル)
ロベルト・マンチーニ:627試合13タイトル(48.23試合につき1タイトル)
アレックス・ファーガソン:2131試合44タイトル(48.43試合につき1タイトル)
マルチェロ・リッピ:958試合19タイトル(50.42試合につき1タイトル)
カルロ・アンチェロッティ:952試合16タイトル(59.5試合につき1タイトル)
ラファエル・ベニテス:912試合12タイトル(76試合につき1タイトル)
アーセン・ヴェンゲル:1487試合17タイトル(84.74試合につき1タイトル)
ブライアン・クロー:1319試合13タイトル(101.46試合につき1タイトル)
ビル・シャンクリー:1160試合11タイトル(105.45試合につき1タイトル)
ボビー・ロブソン:1446試合13タイトル(111.23試合につき1タイトル)
最高峰の監督である事は疑いの余地がありません。
■唯一の問題
そんな無敵なモウリーニョさんにも弱点は存在します。
グアルディオラの絡みで最近よく聞く「サイクル3年説」。
結論から言えば、これを越えれない事が弱点です。
サー・アレックス・ファーガソンがハーバード・ビジネス・レビューで語っていた事によると…
「将来を見越したチーム作りと状況判断は重要。成功するチームも4年で選手が入れ替わる。選手は30歳以上、23~30歳、23歳未満の3つに分類する。若手には先輩を見習って成長させる。どんなチームも4年で変化が必要となる。全盛期を過ぎた選手を放出し、若手を入れ、徐々にチームを進化させる。3,4年先を見越したチーム作りをし、決定を下す」
つまり、「サイクルを回す事」です。
長期でチームを率いる事をするならば、ここを越える必要があります。
モウリーニョも…もっと言えばグアルディオラでさえも、「1サイクル(3〜4年間)」までしか経験しておらず、フロントと一体となって「2サイクル目」を作り上げる経験をしていない。
これを可能にする事が、そのまま次に成長するステップと言っていいでしょう。
■具体的に
つまり…
1、モチベーションの落ちた選手との対立を厭わない。
2、若手の起用を躊躇わない。
3、それを、監督の自己判断の域を越えた「チームのために働く事」をであると納得させられるか?です。
ユナイテッドの歴史が分かりやすいので引用すると…
1、ベッカム放出。
3、練習嫌いなテベスとの対立。ロナウドと揉めて着地点が見つからなかったニステルの放出。コンディション管理が甘いルーニーとの対立。
などなど挙げればキリがありません。
これは発端こそファーガソン監督の個性なんですが、最終判断が全て「チームのため」なので、すべての人が納得していたんですね。
逆に「それ以外の事」には寛容でした。
ピッチ上のサッカーでは「綿密なポジション取り」を必要以上に求めたりしなかったですし、利己的なプレーも、それが「適切な仕掛け」であればポジティブなものと受け止められていました。
ヤヌザイのように猪みたいに突っかけていくプレーではなく、適切なスペースがあって仕掛けていくならばそれを咎めたりはしませんでしたし、ポジションがズレていても全力で戻れば問題なかったのです。
■違い
さて、分かってきましたね。
モウリーニョ…さらにファン・ハールも「自分のメソッド」を持った監督です。
「独自の色」が強く、それに選手を当てはめてサッカーを作る監督なのです。
これは短期的に見れば素晴らしい結果をもたらしますが、長期的には「選手の自由度」を奪い、マンネリをもたらします。
その典型的パターンと言えるのが、モウリーニョとファン・ハールです。
要するに「守備の約束事」を大量に作って、機械的に負けないチームにしようというアプローチです。
それを習得するまでは面白いのですが、完全に覚えてしまったら新しい事はなく自由度もない。
その「つまらなくなった時」が、すなわちサイクルの終了です。
そして、ここからはグアルディオラも入ってくる共通のポイントが…
「勝った時代を作った選手の入れ替え」が難しい事です。
例えば、いきなりリベリかロッベンを差し置いて若手を起用し負けたらどうなるか?
シュバイニーの放出でされたブーイング並の出来事になるでしょう。
それに引導を渡せた(引退を納得させた)のは、第1政権時の恩師モウリーニョだったからこそ可能だったのであり、これをベニテスがやろうもんならファンの退任圧力は過去最高のモノとなっていたでしょう。
この「次のサイクルのための放出」をファンと選手に納得させられるかどうか?が分かれ目になるのです。
すなわち、モウリーニョの弱点は…
1、若手の起用が苦手。
2、選手の自由度制限でマンネリしモチベーション低下。
3、「チームのため」より「勝つため」優先しすぎる。
です。
■まとめ
3年サイクルを越えるためには…
1、選手に自由度を与える。
2、選手を入れ替える
3、目先より先の目的意識を持つ。
3がすなわち哲学と言えるモノです。
現役監督ではアンチェロッティさんが完全に適任ですね。
移り変わりが速いサッカー界。
モウリーニョさんにはまだまだ最前線を走って欲しいですね♪
■後書き
では、本当に長期政権を執る必要があるのか?
現状「ない」と言えます。
特にトップ中のトップクラブではなおさらです。
同じ監督でチームを作り直す手間と、別の監督を連れてきて選手のモチベーションも新たに、さらに選手を獲得するのとどちらが結果が出易いか?
後者なんですね。
短期のスペシャリスト(モウリーニョ、グアルディオラなど)を連れてきて、一気に補強して仕上げる方が簡単なのです。
サイクルが終わったら次もそういう監督に引き継げばいい。
選手が生涯1チームで終える事がなくなったように、監督も長期政権を執る時代ではなくなってきたのかもしれません。
長期政権のメリットも色々あるんですが、今回は関係ないので端折ります。
短期のスペシャリストの時代に入るのか?
またファギーのような人が出てくるのか?